FIA-F4とは

■新しい国際共通規格

 FIA-F4は、FIAが制定した新しい国際共通規格ジュニアフォーミュラで、2014年のイタリアを皮切りに、2015年は日本、英国、ドイツ、オーストラリアで開催されています。日本では2015年度よりSUPER GTを運営するGTA(GTアソシエーション)がプロモーターとなり年間7大会(全14戦)のFIA-F4選手権シリーズ(F4 Japanese Championship)が始まりました。FIAはレーシングカートを通して経験を積んだ15歳以上の選手たちが本格的4輪レースに入門する際の入り口にしようという意向で、この新しい国際共通を2014年度に定めました。F3以下のジュニアフォーミュラレースは世界各地で開催されてきましたが、それぞれが独自に設定発展したカテゴリーで、結果的に複数国で開催されたフォーミュラ・ルノーはあったものの、国際共通規格はこれまで存在しませんでした。
 FIA-F4は国際共通規格に基づきFIAの公認を得たシャシーとエンジンを用いる「ワンメイクレース」として開催されますが、シリーズを運営する各国のプロモーター毎にシャシー及びエンジンを選定できるので、シリーズによりシャシー/エンジンの組み合わせは異なります。エンジンには排気量にも過給の有無にもバリエーションがありますが、FIAによって出力曲線の範囲や最高出力(115kw=約160PS)が定められており、シリーズ内でのイコールコンディションはもちろん、シリーズごとの性能差も最小限に維持されることになっています。

 

■最大価格設定による高いコストパフォーマンス

 車両については国際共通規格としてFIAが厳密な最大価格、いわゆるキャッププライスが設定されています。2015年の段階でFIAが定めたキャッププライスは、車体(エンジン以外、ギヤボックス、パドルシフト、データロガー含む)価格が38000ユーロ=約532万円、1シーズン1万kmの走行を想定したエンジン単体価格が9500ユーロ、(約135万円)、1年後のリビルドが4000ユーロ(約55万円)となっています。
 日本でFIA-F4選手権を運営するGTAは、童夢製シャシーF110にTOM'Sが開発した2000cc自然吸気直列4気筒エンジン、TZR42の組み合わせを採用しました。エンジンについては年間リビルド料金を含めたリース契約を105万円/年で3年間結び、契約満了後リビルドの終わった状態のエンジン本体をユーザーに引き渡すという形式がとられます。
 性能を既存の国内カテゴリーと比較すると、JAF-F4に近く、安全性はF3同等、従来存在した同レベルのジュニアフォーミュラカーに比較してコストパフォーマンスは大幅に高いカテゴリーです。

■従来にない露出とスカラシップ

 日本のFIA-F4選手権シリーズは全大会SUPER GTのサポートイベントとして大観衆の前で1大会2レース開催され、GTAテレビが映像制作を行って場内ばかりかTV番組内でも放映されるので、従来のジュニアフォーミュラに比較すると飛躍的に露出機会は広くなっています。
 各大会のパドックにはGTAによりメンテナンステントが用意されるほか、JMIA(童夢/トムス/戸田レーシング)が、スペアパーツ、テクニカルを含めたユーザーサポート窓口を設置、参加者のランニングコスト軽減と利便性確保が図られます。またGTAはシリーズチャンピオンに対し上位カテゴリーに参加するための資金として1千万円の奨学金を授与する一方、全日本F3選手権やSUPER GTへのステップアップ経路を確保する準備を進めています。また、従来の地方選手権では設けられていなかったチームに対する賞典が新たに設けられ、FIA-F4シリーズでは正式にチームランキングを決め、国土交通大臣賞、JMIA賞が授与されます。
 日本のFIA-F4選手権シリーズには現時点では16歳から取得できる限定Aライセンスで参加が可能ですが、GTAは将来的にFIAの方針に合わせ15歳からの参戦が可能になるよう関係諸方面との折衝を進め、さらにシリーズ参戦の間口を広くしようとしています。

■多彩な参加者の顔ぶれ

 2015年から始まった日本のFIA-F4選手権シリーズには開催初年度から多彩な顔ぶれがエントリーしました。これまでFCJ(フォーミュラチャレンジ・ジャパン)として展開していたTOYOTA、HONDAの育成プログラムがエントラントとしてシリーズに参戦する一方、国外メーカーのスカラシップや国内独立系レーシングスクール/スカラシップも加わって同じレースを戦い腕を競うことになり、上位カテゴリーへのステップアップ経路として新たな次元を切り拓いたと言えるでしょう。
 その他、SUPER GTやSUPER FORMULAをはじめ、他カテゴリーを闘うチームがサテライト的チームを組織してエントリーするという流れも生じています。童夢F110は、セッティングに繊細に反応するフォーミュラカーならではの基本特性を示すので、ドライバーばかりかエンジニアやメカニックを育成するためのツールとして認められた形です。
 一方では、純粋にフォーミュラカーレースを楽しもうと割り切った選手たちが参戦したのもシリーズの特徴です。既存のジュニアフォーミュラは参加台数が少なく、ホビーレーサーにとっては退屈なレースになってしまいがちでしたが、FIA-F4シリーズにはステップアップ指向の選手からホビーレーサーまで幅広い参加者が集り、技量毎に激しい闘いが繰り広げられるのでホビーレースとしても楽しめるレースになったのです。

■参戦形式も多様

 参加の形式も多彩です。シャシー、エンジンをドライバーが購入してオーナードライバーとして参戦する形式の他、スカラシップ系のチームはチームがマシンを用意しドライバーに貸与する形式もあります。また、メンテナンスガレージがシャシー、エンジンを購入して所有、ドライバーにレンタルするケースもあります。この場合、ドライバーは1年単位のレンタル料を支払えばシリーズに参戦できるようになります。コンポーネントの上限価格が低いレベルで固定され規則として明示されているため、それぞれの目的に合わせて様々な参戦形式が成立するのもFIA-F4の特徴です。
 FIA-F4は立ちあげ初年度にして、国内で開催されるジュニアフォーミュラとして過去に例を見ない盛り上がりを見せています。