Mar.08.2012 「童夢S102.5 開発レポート2」

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●S102.5完成
S102.5がS102と最も違うところは、ジャドのDB3.4 V8エンジンを搭載することです。先週ルマンのペスカロロの工場へ、ジャドよりDB3.4 V8が到着して本格的な組み立て作業が行われました。S102.5の完成が近づくのに合わせて、3月5日、ACOのダニエル・フェルドリックスによって最初の検査が行われました。新たなホモロゲイションのための検査ですから、この検査は非常にシビアですが、ACOの直ぐ側のペスカロロの工場であることもあって、和やかな雰囲気の中行われました。もちろん、深刻な問題は何も問題はなく、順調に検査は行われました。

写真に写る一番右の人物がACOのダニエル・フェルドリックス、真ん中がペスカロロのテクニカルダイレクターのクロード・ガローピン、一番左が、ご存じ、フランスの英雄アンリ・ペスカロロです。
ACOの検査後、最終の組み立てが行われ、3月6日夕方、S102.5は完成し、ただちにS102.5はペスカロロのトランスポーターに積まれて、シェイクダンが行われるフランス空軍基地へ向かいました。

●シェイクダウンテスト
昔と違って、現在のシェイクダンテストは儀式の一つではありません。本格的な開発テストを行う前のシステムチェックが行われる場となっています。S102.5の場合、ベースとなったS102から変更されたシステムをチェックするためのテストとなりました。

S102.5は、ジャドのDB3.4 V8エンジンと共にザイテックの電磁石を使うパドルシフトシステムが組み合わせられています。ザイテックの電磁石を使うパドルシフトシステムは、非常に素早く確実なシフトチェンジが行えるシステムです。この素早いシフトチェンジを可能とするため、ジャドのエンジンをコントロールするコンピューターとザイテックのパドルシフトをコントロールするコンピューターが、綿密に連携することが要求されます。
童夢はS102を開発した際、S101を改造したテストカーまで作ってジャドとザイテックのシステムを適合させるテストを行いました。

パドルシフトのマッチングをテストするには、高速で走行出来ることが条件となります。ユノディエールストレートが使えれば、この様なテストに最適なのですが、ユノディエールストレートは通常一般公道ですから、特定の基幹しか使えません。
そこでルマンからクルマで約3時間離れたフランス空軍の基地を借りてシェイクダウンテストは行われました。

シェイクダウンテストは、ジャドのエンジニアとザイテックのエンジニア、ペスカロロのエンジニアのリカルド・ディビラ、そして童夢のエンジニアによって、慎重に開発テストは行われました。
シェイクダウンテストは、プジョーから移籍してきたニコラス・ミナシアンが担当しました。大急ぎで用意した童夢のレーシングスーツを着てミナシアンは現れましたが、数年前ミナシアンは、ザイテックのパドルシフトを使ったクリエイションチームに所属していたため、このテストに最適なドライバーと言えるかもしれません。

彼方此方にボーイング747等巨大な輸送機が点在する空軍基地は約3kmの長い滑走路を持っています。テストが開始される直前にもロシア製の巨大な輸送機が着陸しましたが、頻繁に離着陸が行われることはないようです。時折、戦闘機が上空を飛ぶことはあっても、軍の基地らしさは、あまり感じられません。それ故、しばしばペスカロロは、この空軍基地でテストを行っているようです。

目的がシステムチェックであるため、ミシュランのタイヤサービスも呼びませんでした。それ以外にも、テストに不要なパーツを取り付けない等、多少本来とは違う姿でS102.5は持ち込まれました。
すっかりと準備は整っていたのですが、この日は少々寒すぎました。
11時過ぎに暖機運転を行う予定でしたが、気温が低いため、実際にエンジンを始動し暖機完了後、テストを開始した時には昼を回っていました。

最初に行われたのは、パドルシフトのシステムをチェックすることではなく、タイヤの温度やサスペンションのセットです。
路面(滑走路)がドライであるのは幸いでした。数回滑走路を往復した後、本格的なテストが開始されました。

テスト前日、ルマンのペスカロロの工場で、エンジンを始動してパドルシフトのチェックが行われました。この時は問題なくても、300km/hを超えるスピードでシフトチェンジを行うと、細かい調整ではありますが、次々と課題が出てきましたから、このテストを実施した効果は大きかったと思われます。
後半には、ジャドとザイテックのエンジニアが次々と新しいセッティングを試みる間に、ペスカロロのエンジニアもシャシーの空力をチェックを開始しました。
                    
夕方までにジャドとザイテックのエンジニアは様々なデータを収集することが出来たようです。このデータに基づいたセッティングを施して、次回のテストは開始されることとなります。

●S102.5の本格的なテストは4月初めスペインでスタート
無事、シェイクダウンテストの終了したS102.5ですが、本格的なテストは、4月初めスペインから集中して行われます。
現在、4月3日から大西洋沿岸のナバーラで、その後地中海方向へ移動して、10日にモータースポーツ・アラゴンでのテストが予定されています。

スペインから開始されるテストは、クルマとしての速さを追求するためのテストですから、今回と違って、最終的なスペックで走るだけでなく、ニコラス・ミナシアン、セバスチャン・ブルディ、そして2日前岡山で行われるSuperGT開幕戦から駆けつける荒聖治もテストに参加します。

アラゴンは様々な設備が整っているため、近年ファクトリーチームの多くもテストで使っていますが、ペスカロロ童夢が走る数日前まで、強力なライバルチームもテストを行っているようです。

今回のテストは、本来非公開でしたが、Twitterで知ったフランスの数社のメディアが駆けつけただけでなく、基地のフェンスの外側にも大勢の野次馬が詰めかける状況となっていました。
さすがルマンで4回も優勝したフランスの英雄ペスカロロです。
だんだんルマンの雰囲気が盛り上がってきましたよ。

鈴木 英紀 著