Aug.29.2014
かねてより開発を続けてきましたマザー・シャーシですが、このたび、その第一号車として86ボディを架装した「M101-86(童夢社内コードナンバー)」が完成しましたので、お知らせします。

マザー・シャーシは名前の通り、さまざまな車両のベース・シャーシとして活用できることに配慮した汎用性の高いシャーシですが、マザー・シャーシそのものは、カーボン・モノコックと一部のパーツから成る部品に過ぎません。
そのマザー・シャーシに、エンジン、ギアボックス、カウルなどを組みつけてレーシングカーを完成させる訳ですが、このたび、その第一号作品として86ボディ仕様のM101-86が完成しました。
なお、この86ボディ仕様のM101-86は(株)GTAからの発注により開発した(株)GTAの専売品となりますので、(株)GTAからの発表も参照してください。

マザー・シャーシの構想は、本来は、日本のレース資金が一方的に海外に流出してしまうだけのFIA-GT3の浸食を阻止する方策としてひねり出された苦肉の策ですが、その為には、FIA-GT3よりも安くて速いシャーシを提供しないと普及しません。
しかし、大排気量高出力のFIA-GT3に勝る性能を得るためには高性能なシャーシが必要ですが、そうなるとコスト面での優位性を失いますから、いつの時代も安く速いマシンの開発は難しいものです。
その為、もともとは童夢のスポーツカー用に開発するシャーシをGT300用に流用できないものかと言うアイデアから始まったマザー・シャーシの企画ですが、レースでの性能向上を目指して開発を続けるうちに主客転倒してしまい、現状、マザー・シャーシはレース専用シャーシに特化してしまっていますから、ロードカーに用いる為には大改修が必要な状況となっています。
それだけに、GT300には最適のベースシャーシになったと自負していますし、あらゆるエンジンやEVにも適応性を持つ、その名に恥じない、懐の広いマザーであると自負しています。

さて、そのマザー・シャーシをベースとした完成車両の第一号車であるM101-86」ですが、詳しい仕様はGTAの資料を参照いただくとして、ここでは、少しデザインについて述べておきたいと思います。
ご存じのように童夢には立派な風洞がありますが、これとて単なる道具に過ぎませんから、使い方によっては毒にも薬にもなりますし、下手をすれば、先進の技術領域を開拓するどころか、最悪の場合は、ライバル車よりも劣っていない事の確認に終始してしまう事だってあり得ます。
F1やルマンカーも例外ではなく、最近のGTマシンにおいても、その形状は類型的で区別もつきにくくなっていますが、これは、ダイヤを最も美しく見せる144面カットの精度のみを競い合っているからであり、ダイヤをより美しく見せる新しいカットの研究とは意を異にしますし、単に、重箱の隅をほじくるだけの作業と言えます。
しかしそれは、空力開発技術だけの問題では無く、空力とスタイリングを画一化してしまうようなレギュレーションの設定の仕方に問題があると言わざるを得ませんし、それは、何らかの目的があっての事では無く、レギュレーションを策定する人たちの見識不足による不作為に過ぎませんから、より虚しさが募ります。
だから、スタイリング・デザインの施しようも無いがんじがらめのレギュレーションと空力と言う普遍化作業によって、今や、レーシングカーの開発においてスタイリング・デザイナーの出る幕は無くなっていますが、それにしても、カッコいいレーシングカーが少なすぎます。
「速いレーシングカーは必然的に美しい」と言われた時代も今は昔、連戦連勝を続ける速いレーシングカーすら醜悪に見える昨今ですが、そこで、レーシングカーは速い以前に美しくあるべきだと考える童夢(私だけですが)では、今回の86のボディ・デザインにおいては、GT300のレギュレーションは遵守しながらも、その範囲において、最もカッコいいと思えるGTマシン像を追求してみました。
その為、ある程度、最新の空力トレンドを無視していますが、今回の空力技術者たちの役目は、今までに培った空力開発技術を駆使して失地回復することにあるので、直ちに平均的な性能に改良してくれるはずですから、ご心配なく。
林みのる