Feb.16.2002 NSX ドライバーオーディション

NSX ドライバーオーディション 2002年度JGTCドライバーを決める為のオーディションを 1月29 日から2月1日までTi サーキット英田で行いました。参加ドライバーは金石 年弘、Richard Lyons 、Jonathan Cochet 、 Darren manningの4名ですが、NSXで1年戦った経験を買ってSebastien Philippeは決定していますので、残りの一名を選ぶと言うことになります。
また、基本的にこのテストは車両開発のために行っており、無限車の 道上、伊藤の無限ドライバーと手分けをして各種テストも同時進行で進めました。
1月29日はS.Philippeのドライブで基本的なセッティングの確認と予定のテストメニューをこなし、金石 年弘選手に交代。同選手は今回のドラーバーオーディション に参加しておりNSX は初めてなので慣熟走行というところです。
午後の2 回目のセッションでも最後に金石選手による慣熟走行を行い終了しました。
1 月30 日、1 回目のセッションは主にシャーシ関係のテストを行い、2 回目のセッションは金石選手の慣熟走行をメインに考えていましたが、生憎 、雪が降り始め走行を断念せざる得ませんでした。
3 回目の最後のセッションでは金石選手の慣熟走行からタイムアタックを行い、その後同じくオーディションに参加するR.Lyons 、J.Cochet の両ドライバーの慣熟走行をそれぞれ1RUN 行い終了としました。彼らも同じく今回NSX をドライブするのは初めてです。
1 月31 日、S.Philippe からスタートし確認走行後J.Cochet 選手及びR.Lyons 選手の慣熟走行を行いこのセッションは終了とし、午後のセッションはJ.Cochet 選手及びR.Lyons 選手の慣熟走行からミディアムソフト ニュー タイヤによるタイムアタックを行う予定でしたが、予定通り両ドライバーの慣熟走行を行い、R.Lyons 選手のニュータイヤによるアタックを行い、更に1RUN した時ドライブ系にトラブルが発生して修復に約30 分程度必要となりました。
そのため、J.Cochet 選手のニュータイヤによるタイムアタックは時間的に不可能となり同選手によるチェック走行 のみでこのセッションを終了としました。
2 月1 日、スケジュールの都合で本日からオーディション参加のD.Manning 選手の慣熟走行から始め、その後昨日予定していたJ.Cochet 選手のミディアムソフトニュータイヤによるタイムアタックを行いました。
後半は再度D.Manning 選手の慣熟走行を行い、その間に各種テスト並行して実施。そ の後同選手によるソフトニュータイヤでのタイムアタックを行いこのセッションは終了しました。
今回テストの最終セッションではR.Lyons 選手、J.Cochet 選手、D.Manning 選手の 順で中古タイヤからそれぞれ同じハードコンパウンドのニュータイヤを3 セット用意し、タイムアタックを行った。 R.Lyons 選手、J.Cochet選手と順調にタイム計測し、最後にD.Manning 選手のアタックを行いましたがアタック中にシフトミスしコースアウトしてしまいました。 そこで、急遽予定外のミディアムソフト ニュータイヤを使用し再計測を行う事とし、D.Manningの計測後この時点までベストラップを計測していたR.Lyons選手にも同じタイヤを使用し再計測を行いました。この最後のニュータイヤでもR.Lyons選手は最速LAP を記録し今回テスト、オーディションを終了しました。

今回テストに参加したドライバーのプロフィールです。

金石年弘 日本23 歳
2001 ド イツF3 チャンピオン
2000 ド イツF3
1999 日 本 F3
Jonathan Cochet  フランス 24 歳
2001 プロストF1 テストドライバー
2000 フランスF3 チャンピオン
1999 フランスF3
Richard Lyons  北アイルランド 22 歳
2001 フォーミュラ日本、鈴鹿1000km
2000 フォーミュラールノー 全英GT 選手権
1999 パルマ・アウディー シリーズ2 位
Darren Manning  イギリス 26 歳
2001 BAR F1 テストドライバー ヨーロッパF3000
2000 BAR F1 テストドライバー ヨーロッパF3000
1999 日 本F3 チャンピオン

今回、最終的に第2 ドライバーをRichard.Lyons 選手に決定しましたが、
各ドライバーの 印象をまとめておきます。


金石年弘

比較的慎重でじわじわとタイムを上げて行くタイプのようです。ブレーキの使い方の習熟 に時間がかかっており、最終的にもブレーキ液圧がS.Pilippe 選手に比べ70 〜80% 程度しか立ち上がっておらず十分に使えていませんでした。
始めてのニュータイヤ アタック時に同じタイヤを使用しているドライバーに比べ 約0.5 秒遅い結果でしたが、これはベストLAP 時にシフトミスを犯した影響が大 きく、このシフトミスにより約0.4 秒のロスタイムがあり、実質的には0.1 秒遅れが その時点での実力と思われます。
しかしながらLAP タイムは安定しており十分な時間と距離を走り込めば"安定型 ドライバー"として育ちそうな気配が感じられました。
ただ、今回テスト中に士気、闘志があまり感じられなかった事は彼のキャラクターかも 知れませんが、少なくともチームを動かすような迫力はなかったといえます。

Jonathan Cochet

彼も比較的慎重なタイプでありますが、コメントがしっかりしており自分自身のスタイ ルを既に確立しているようなイメージです。ドライビングに影響の出るブレーキ、アクセルのペダルポジション等にも自分の要求をはっきり出しプロとして妥協しない姿勢は評価に値すると思われます。
初めてのニュータイヤと2 回目とも、R.Lyons 選手に遅れを取っていますが、後半はユ ーズドタイヤでも比較的良くまとまった好タイムを記録しています。
ドライバーとしてのパフォーマンスはかなりの物を持っていそうで、機会があれば再度テストしてみたいと感じさせる魅力的なドライバーではありました。
とにかくコメントは細やかで、特にコンストラクターにとって重宝するタイプのドライバーです。

Richard Lyons

今回テストで最も士気を感じさせたドライバーでした。年齢はまだ22 歳と若く経 験という面では他のドライバーに劣るのは仕方の無い事ですが、それをもハンデ ィーとしない迫力を感じさせました。
中古タイヤによる慣熟走行時においても確実にライバル達に1秒近いタイム差を常に記録しており、最後のNEW タイヤアタックでも見事に25 秒台に入った事は驚きでもあります( 昨年開幕戦Ti 予選タイム S.Philippe 選手は1'26"2 でありポールポジションの道上選手で1'25"6 であった)。
タイムが速い分ミスも何度か見受けられましたが、今後のテスト走行でクルマに慣れれば十分に補える範囲と考えています。
自分が走行していない時はロガーデータを見るか他のドライバーの走りを観察にコースを見て回る等非常に勉強熱心で、またその成果をすぐに発揮した点でも高く評価できます。 彼のインフィールド区間の速さは特筆物であり、細かなテクニックの面でも秀でた能力を感じさせ、今後の飛躍も十分期待できるドライバーであるとの印象をもちました。

Darren Manning

彼だけ時間の都合で最終日1 日のみの走行となりましたが、走り出しから悪くないタイ ムを出し、初めてのニュータイヤにおいて、ソフトタイヤではありましたが1'26"2 を記録 し驚かされました。
非常に短い時間でクルマの特性を上手くつかみ習熟の速さは別格です。
特に最終コーナー出口から1 コーナー進入までをサインガードから見ていると、普段のレギュラードライバーの走りを見ているようで、安定感とスムーズさは他のオーデションドライバーに一歩先んじていた感があります。 最後2 セットのニュータイヤでは結果的にはR.Lyons 選手に差をつけられましたが非常に高い能力を持っている事は間違い無く、魅力的なドライバーではありました。
キャラクター的にも常に冷静で余裕を持った振舞いが見られ精神的な強さをイメージさせられます。

チーフエンジニア 中村 卓哉


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