Oct.27.2004   2005年度ルマンへワークス体制での参戦を決定しましたのでお知らせします。
参加車両「童夢S101-Hb」は鋭意開発中。
'04仕様 S101
 
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株式会社 童夢では、このたび株式会社 JIM GAINERとの提携により、2005年度の「24 Heures du Mans」に参戦することになりましたのでお知らせいたします。
提携の内容はJIM GAINERの発表内容に準じますが、童夢も従来のように車両をチームに販売してレースに参戦していただくという、間接的かつまどろっこしい参戦方法に限界を感じ、2005年度は完全なワークス体制での参加を計画していました。
当然、それには多大なる自己資本の投入が必要ですが、JIM GAINERからは、それを私たちも一部負担するから、優勝した暁には、共に感激できる立場を提供しろというお申し出がありましたので、喜んでお言葉に甘えた次第です。
特に田中代表は、私(林 みのる)が二十歳過ぎに製作した「くさび」というグループ7のレーシングカーでレースに出場していたという時代からのえにしもあり、それから36年を経た今、また一緒にルマンに挑めることを大変に楽しみにしています。

当初は、「JIM GAINERとしてルマンに参戦したいので、童夢のワークス体制にJIM GAINERとしての一台を追加できないか」との申し出がありましたので、この2カーチーム案も検討しましたし、クローズドボディのニューマシンの開発も検討しましたが、慎重に検討を重ねた結果、熟成の進んだ[童夢S101]を究極までアップデートした1台に集中したほうが総合優勝を狙うには最も効率的であるとの結論に達しました。
というのも、「童夢S101」は市販レーサー(何かいい響きですね)ですから、風洞内での改良結果を全て具現化しても、それを買わなければならないチームにとっては有難迷惑ということもあり、現実問題として、データとしてのアップデートと実車の性能差はかなり拡大してしまっています。つまり、大幅な性能向上の余地を残しているということなので、ニューマシンにありがちな初期トラブルを避ける意味でも、完成の域に達した、究極の「童夢S101」を投入すべきという結論に達しました。
また、これにはレギュレーションの変更も影響しており、2003年レギュレーションに一定の改造を加えることにより重量やリストリクターなどのハンディから逃れられる規定が新設されたことも「童夢S101」Hybridバージョンに決定した大きな要因となっています。

童夢車のルマン挑戦は、1979年から1986までの8年間と2001年から2004年までの4年間の計12回に亘っていますが、最初の数年間は参加していることが不思議なくらいの貧困チームで勝ち負け以前の問題でした。しかし、その時代が無ければ今日も無いでしょうし、間違いだったとも思っていないし、もちろん後悔もしていません。また、前期後半は自動車メーカーや他のチームとのJVのような体制でしたが、一から勉強を始めた人たちの指南役みたいな立場に終始しましたから、これも戦いというにはあまりに脆弱な状況でした。
15年のブランクを超えて2001年に復帰したときは、日本の大自動車メーカーですら数年で撤退してしまうほどお金のかかるようになったこのレースに、とてもワークス体制で参戦する勇気は無く、アマチュアのための市販レーサーとして上限価格が設定されたクラスのマシンを投入することでの復帰を図りました。
しかし、これはこれで隔靴掻痒というか、全力で戦っているという状況には程遠いというようなジレンマがあり、復帰後4年を経て、どうしても、一度だけでも完全な体制での挑戦を実現したいと考えるようになりました。その、無謀な計画をこそこそと練り上げているところにJIM GAINERからの申し出があり、おかげで、かなり理想に近い形でのルマン挑戦が実現する事になった訳です。 完全な体制とはいっても、大きな自動車メーカーのワークス体制とは異なる次元の話ではありますが、少なくとも、童夢のルマン挑戦13回の中では最高のコンディションでの戦いが出来ると期待しています。
無限エンジンも、今年はJUDDよりもはるかにパワフル&タフであることが実証されました。タイヤもより高性能なものを使えるようになるでしょう。ドライバー達も、今年までの経験からますますコースを熟知してきました。エンジニアリングは童夢が総力体制で臨みます。それでもダメだった場合は、「ルマンは永遠さ!」とでも言っておきましょう。

  参加チーム   JIM GAINER  
  チーム代表者   田中 慶治(JIM GAINER代表取締役)  
  チーム総監督   伊達 鷹彦(JIM GAINER取締役)  
         
  チーム監督   佐々木 正(童夢 取締役)  
  テクニカルディレクター   奥 明栄(童夢 取締役)  
  チーフエンジニア   湯地 浩志(童夢)  
  チーフメカニック   未定  
  スポンサー   未定  
  ドライバー   道上 龍 他2名  
  車両   童夢S101-Hb  
  エンジン   無限MF-408S  


童夢S101-Hb
2001年に発表した基本モデルの童夢S101は、AUDIやBentleyの様に自動車メーカーが莫大な予算を投じて開発したレーシングカーとは異なり、ルマン24時間レースに限らずFIAスポーツ・カー選手権など他のレースへも出場可能な、価格をFIAの定める上限市販価格内に抑えた市販レーシング・カーですが、その優れた空力性能とハンドリング特性によりデビュー・イヤーよりメーカー・チームとトップ争いを繰り広げました。参戦初年度の2001年から今年までの4年間、ルマンに於いて常に最高速度を記録し続け、公式予選では常にトップ6に入る活躍をしていますが、結果的には、膨大な予算と物量に勝るメーカー・チームの後塵を浴び、昨年の6位入賞が現在迄の最高成績となっています。
しかし、FIA選手権に於いては、2001年の参戦初年度から数々のポール・ポジションや優勝を記録し、FIA選手権が終了する2003年まで、レーシング・フォー・ホランドの活躍により2年連続チャンピオンに輝いています。

今年、2004年からはFIAとACOの技術規則が一本化され、車両のレギュレーションも刷新されました。そして現在ルマン24時間レースに参加が認められるLMP1車両として3つのタイプが存在します。2004年・LMP1車両規則(ニューレギュレーション)に準ずる車両。2003年・LMP900及びLMP675車両規則に準じた車両(2003年車両そのまま)に下記のようなハンディキャップを科した車両。2003年・LMP900及びLMP675車両規則に準じた車両に、一定の改造を施すことによってハンディキャップを免除されるハイブリッド車両の3種類です。

2003年末までに公認取得及び製造された車両は、2005年末迄はその参加が認められますが、旧型車両(2003年末までに公認取得及び製造された車両)が性能を抑制された新型車両に対し有利にならない様にハンディキャップが与えられています。今年はリア・ウィング幅の200mm削減、燃料タンク容量の10リットル削減、エンジンへの吸気リストリクター径の1サイズ削減の3つの規制が実施されましたが、来年は更にLMP1クラスの旧型車両には最低重量900kgに対し50kgの重量加算および吸気リストリクター径の5%削減が求められる為、かなりの戦闘力低下が予測されます。
こうした事情を勘案し、童夢としてはハンディキャップ措置を受けるより、得意の空力開発技術により、2004年規則によって生じる性能低下をかなりリカバーできる可能性の高いハイブリッド方式を選択することにしました。
ハイブリッド車の要件としては、、2004年規則が本来の2座席スポーツ・カーのスタイルを取り戻すこと、また年々高速化する車両の性能抑制と云った安全面への配慮から改正された趣旨を受け、ボディー形状は左右対称である事、従来のフラット・ボトムに代わりステップド・フロアーが採用された事などが主な変更点として挙げられます。
ハイブリッド化する事で空気抵抗は10%以上増加しますが、それと同時にダウン・フォースを約20%増加させる事でトータルとしての戦闘力アップを図り、今年のポール・ポジションタイムを上回るレベルの性能向上を狙っています。

「童夢S101-hb」の完成及びシェーク・ダウンは来年の2月初旬を目標とし、約5000kmの走行テスト及び5/8のスパ・フランコルシャンでの実戦テストを経てルマン参戦といった予定を考えています。


株式会社 JIM GAINER -プレスリリースより
株式会社 JIM GAINERは、株式会社 童夢との提携により、2005年度の「24 Heures du Mans」に参戦することになりましたのでお知らせいたします。

株式会社 JIM GAINER(2004年10月1日設立)は、従来より、プライベートなレーシングチーム「TEAM GAINER」として「Ferrari F360」(童夢に開発を依頼したJGTC仕様車)でJGTCへ参戦して参りましたが、このたび、業容の拡大にともない法人化いたしました。
株式会社 JIM GAINERはモータースポーツを事業の核とする企業として設立いたしましたが、モータースポーツを機軸に営利を追求するというスタンスではなく、「モータースポーツをより高度に楽しむ」ことを目的に運営して行きたいと考えています。

現在、JIM GAINERでは、2台の「Ferrari F360」をJGTCのGT-300に投入しており、2005年度は、それに加えて、童夢との提携により「24 Heures du Mans」に参戦することになります。当初は、童夢独自のルマン参戦計画への協力の意味も含め、童夢のワークス体制にJIM GAINERの「童夢S101」を一台追加する2カー体制での参加を打診していましたが、種々検討を重ねた結果、1台に全力を集中したほうがベターとの結論に達し、実質的には、童夢レーシングチームのオーナーシップをシェアーするという形での参戦となりました。 従って、レースオペレーションはルマンを知り尽くした童夢のワークス体制で行いますので、最新の車両による最高のパフォーマンスで戦いに挑むことが出来ることになりました。

ルマン24時間レースへの参加は、TEAM GAINER時代からの究極の夢であり、このたびの法人設立を記念した事業として、是非、2005年度の参戦を実現したいと考えていましたし、童夢の林代表とはJGTC用の「Ferrari F360」の開発を受託していただいたことを見ても分かるように、40年におよぶ友人であり、パートナーとしての信頼関係は絶大です。
パートナーとしては童夢しか考えていませんでしたので、「この好機を逃してなるものか!」と張り切っていますが、私たちの望みは、ただただ自分たちのマシンが、あのお馴染みのゴールシーンで24時間目のフィニッシュラインを越える現場に立会い、その感激を全身で味わうことです。 「ルマン24時間レースに挑戦」、この心躍る言葉を噛みしめながら、うきうきとルマンの6月を心待ちにしています。

FerrariF360JGTC仕様