May.31.1999  「F1GP-NIPPONの挑戦」 STATUS REPORT



No.3


その上で、もし本当にHONDAがその時のプレスリリースで表明したとおり自社製シャーシで参戦するのなら、実情を鑑みるに、微力ながら私たちにも何かお手伝い出来るチャンスが有るのではないかと期待するのも無理からぬ話ではないでしょうか。
また、HONDAの復帰により無限の立場が微妙になりましたが、考えようによってはより自由なレース活動が展開できるようになるかも知れないし、そうなればジョーダンとの契約終了後に童夢/無限案復活の可能性も無くは無いし等と、いろいろ独自の楽観論を思い描いていた次第です。
それから長い時間が経ちました。そんなかすかな期待が風化するのに充分な時間を経たのち、先日、HONDAはBARへのエンジン供給を発表し、風の噂ではどうやら無限もジョーダンへのエンジン供給を延長する方向で話が進んでいるようです。
「F1GP NIPPONの挑戦」が蹉跌した具体的な理由はさておき、情況的な原因としては、私たちの基本理念そのものが、そもそもこの日本ではかなり的外れな考え方だったように思います。
それを価値観の基準として私たちが描いていたシナリオもまたおとぎ噺のようなものだったのかもかも知れません。
私が当初より言い続けて来た事ですが、私たちは独自に育成してきたレーシングカー開発技術を砂漠に芽生えた若木だと自負していましたし、現状を鑑みるに、その若木が芽生えたこと自体に充分に価値があり、それを大樹にまで育てるには社会の協力が必要だと考えていた訳で、まあ、過大評価と言うか、思い上がりと言うか、勘違いと言うか、認識不足と言うか、今から思うとあたりまえの事ですが、世間は例えそれがどこ産であろうとも大樹しか必要としていなかったんですよね。
もちろん理想論で言えば、私たちが日本のレーシングカー開発技術を大樹にまで育てれば良いのでしょうが、この日本に本格的なレーシングカー・コンストラクターが童夢1社しか存在しないことからも解るように、現在の日本のモータースポーツの環境下では童夢という会社が存続していること自体が大袈裟にいえば奇跡のようなものですから、とてもじゃありませんが独力で大樹に育てる自信も可能性もありません。


■お詫び

そうそう、的外れと言えば一つ謝っておかなくてはならない事があります。
私は以前、NISSANがル・マン参戦プロジェクトを英国のTWR社に丸投げした事を評して、ある新聞のコラムで「あたかも自己の技術力をもって世界有数の自動車レースに挑戦しているようなイメージを世間にPRすることを目的としたギミックだ」とか「こんな自動車メーカーはもういらない」とまで書いてしまいましたが、それ以後のTOYOTAのル・マン参戦やF1計画、そしてHONDAのF1参戦計画までもが、形こそ違え基本的には外国の既存技術に頼る方法で行われようとしているのですから、この日本の3大自動車メーカーの見識を、これすなわち日本の常識と言っても過言では無いと思います。
また何よりも、これらの自動車メーカーが外国製のシャーシに自社のマークを貼付してレースやテストに参加する様を日本のマスコミやレースファン達はおおむね好意的に評価していますし、特に大きな反対意見が聞こえて来る訳ではありませんから、どう考えても、これらのやり方をギミックだと決めつける私たちの少数意見の方が、民主的に判断するならば特異な考え方であり、そして、その考え方をベースとした「F1GP NIPPONの挑戦」のコンセプトが非現実的なものであった事を認めざるを得ない状況です。

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