Dec.21.2007  S102Project   S101.5 SUGO TEST Report










 12月19日と20日、童夢は、スポーツランドSUGOで、S101.5を使った、S102のためのシステム開発テストを行いました。
 1ヶ月前童夢は、SUGOとFUJIスピードウェイで、S101.5を使った、最初のシステム開発テストを行いました。この時我々は、盛りだくさんのテストメニューを用意しました。それらのテストメニューのほとんどは、順調に目的を達成するか、あるいは、サーキットでは納得出来る状況とならなくても、工場に戻って、ほんの少しモディファイするだけで、目標を達成することが出来ました。
 ところが、最も大きな課題だったパドルシフトシステムは、残念ながら、満足出来る成果を得ることが出来ませんでした。

 S102が使うザイテック製の電磁石を使ったパドルシフトシステムは、元々ザイテックエンジンと組み合わせることを目標として開発されています。ザイテック製のパドルシフトシステムは、最初にリカルド製トランスミッションと組み合わせられ、最近はヒューランド製トランスミッションとも組み合わせられています。ところが、レーシングスポーツカーの世界で、最も多くのクルマが採用しているXトラック製トランスミッションと組み合わせられることはありませんでした。
 S102には、ジャドV10エンジンとXトラック製トランスミッションを採用しています。ザイテック製のパドルシフトにとって、どちらも最初の組み合わせとなります。我々は、一足早く、3つを組み合わせたテストを行って、問題の洗い出しを目論でいました。

 パドルシフトシステムは、シフトチェンジの際、ドライバーはステアリング裏に設置されたパドルを操作するだけで、クラッチを踏む必要はなく、アクセル踏みっぱなしでの運転を可能とします。
 つまり、ドライバーはパドルを操作してシフトチェンジの信号を出すだけで、ドライバーに代わって、素早く、そして正確にシフトチェンジを行うと共に、シフトチェンジの際、ドライバーに代わって、エンジンの回転数を合わせるシステムです。
 トランスミッションの操作とエンジンコントロールを統合して行うことがポイントであるため、慎重な走行テストが必要となります。

 テストの結果を受けて、童夢、ザイテック、Xトラック、ジャドは、共同で最良の作動状況を実現するため、細かな開発に取り組みました。12月初めまでに、大体の開発は完了しました。直ぐに再度テストを行いたかったのですが、あいにく、我々が希望する日程で使用可能な日本のサーキットはありませんでした。やっと我々が、希望するスケジュールを確保出来たのは、今週のSUGOとなってしまいました。
 11月のテストは、伊藤大輔と片岡達也の2人のドライバーにテストを担当してもらいました。しかし、パドルシフトに手間取ったため、思った程周回をこなすことが出来なかったことから、テストは伊藤大輔を中心として行われました。片岡達也が、あまり走行出来なかったため、今回のテストは、片岡達也にお願いすることとなりました。

 12月半ば過ぎのSUGOですから、もちろん、朝は氷点下となります。そのため、少々不安の中でテストを開始しました。
 これまでザイテックのパドルシフトシステムが組み合わせられたトランスミッションは、シストリンケージがエンジンの上に設けられています。それに対してXトラックのトランスミッションは、低重心を狙って、シフトリンケージがトランスミッションの左側下方に設けられています。そのため、我々はシフトリンケージを見直しました。
 充分に準備を行ったつもりでも、最初、状況を確認するため、数周走ってはピットに入って、正確に状況を確認しました。

 直ぐに改良したシフトリンケージが、思った通りに作動していることを確認しました。そのため、パドルシフトシステムをコントロールするコンピューターの開発を中心としてテストは進められました。
 1日目、イギリスからやって来たザイテックのエンジニアは、現象を把握するのに努めました。シフトとアクセルコントロールの差を見極めると、最適のタイミングでシフトチェンジを行うよう、コンピュータープログラムの改善に努力しました。そして、2日目になると、片岡達也は、次第に自分の思った通りのシフトチェンジを行うようになりました。
 S102では、同じXトラック製でも、最新のType529をベースとして、専用開発されたトランスミッションが使われます。ですから、完全とは言えませんが、最初の段階の開発は完了しました。

 2日目に少々余裕が出てきました。1日目より少しだけ暖かくなりましたが、気温は5度Cに過ぎません。もちろん、こんな寒い時期にレースは行われませんから、無理を承知でお願いしたミシュランが持ってきてくれたタイヤも、今日のコンディションから大きく外れています。と言うより、こんな時期にテストを行う方が普通ではありません。しかし、やっとタイムを追求した走行も行えるようになりました。
 タイムアタックを行った訳ではありませんが、ルマンスペックのローダウンフォースの空力パッケージとしては想定外の出来事が起きました。どうやら、僅差ですがコースレコードを記録しているようです。
 今回のテストで得たデータを盛り込むことで、S102は、より完成度の高いルマンカーとして完成することとなるでしょう。

Merry Christmas