Apr.08.2008 S102 Project 2008 Suzuka Test Report















●S102の完成
 完成が遅れていたギアボックスは、3日夜、やっとXトラックから到着しました。童夢がXトラックに製作を委託したのは、ギアボックスの本体部分だけです。ギアボックス周辺の様々なシステム、そしてカーボンファイバー製のギアボックスの上半分は童夢製です。
 これまで、肝心なギアボックス本体が納品されないため、ダミーのギアボックスを作って組み付け確認を行っていましたが、システムの作動を確認することは不可能でした。

 Xトラック製のギアボックス本体が到着すると、上半分カーボンファイバー製の部分の組み付けが始まりました。通常のベルハウジングをイメージしている方々も多いと思いますが、マグネシウム製のギアボックス本体とカーボンファイバー製のギアボックスの上半分は、接着剤によって強固に合体され、取り外されることはありません。
 こうして、やっとギアボックスは完成しました。

 しかし、これで作業が終わった訳ではありません。メカニック達によって、徹夜でギアボックスとS102を合体する作業が行われました。
 鈴鹿サーキットにS102が運び込まれたのは、7日の早朝5時でした。

●豪雨の鈴鹿でシェイクダウン
 ところが、ちょうど鈴鹿地方は低気圧の接近によって、7日の天気予報は雨となっています。午前中は何とか保ちそうですが、午後は強い雨が予想されました。
 走り出せる状態となったと言っても、シェイクダウンですから、早朝5時に運び込まれたS102は、念入りにチェックを行い、午前10時伊藤大輔のドライブによって、ピットを後にしました。

 東コースを1周すると、チェックのため、S102は戻ってきました。
 童夢だけでなく、ジャド、そしてザイテックのエンジニアによって、様々なチェックが行われ、再びコースインしました。
 しばらくの間、このようなチェックを繰り返した後、フルコースで走り始めました。取り敢えず1周して、再度チェックのため、東コースをショートカットして、再びピットに入りました。

 伊藤大輔は、サスペンションの堅さを訴えています。と言っても、まだ、セッティングを行うような段階ではありませんから、ドライバーには我慢してもらって、そのまま走行を続けることとなりました。
 ところが、再度コースインしようとした時、雨が降り始めました。

 雨の中、チェックのため数周だけ走行しましたが、雨脚は弱くなるどころか、次第に強くなってきました。
 今回のテストは、今年S102を操る3人のドライバーが顔を揃えました。昨年S101.5を改造したテストカーによってシステム開発テストを行った伊藤大輔と片岡龍也に加えて、立川祐路が加わりました。
 午後立川祐路が乗り組む予定でしたが、まるで台風のような豪雨となったため、走行を諦めることとなりました。

●たのしみな状況!
 朝になって雨は上がりましたが、鈴鹿地方は強い北風が吹き荒れています。最初昨日ドライブ出来なかった立川祐路が乗り組んで、東コースを使ってチェック走行を行いました。もちろん、路面は濡れているため、インターミディエートのタイヤを装着して走行しました。

 次第に路面が乾いてきたため、午前中の最後の10分間でスリックタイヤに履き替えました。しかし、コーナー立ち上がりで常にトラクションコントロールが作動するようなコンディションですから、取り敢えず、スリックタイヤを履いてフルコースを走っただけと言えるでしょう。

 SUPER GTのGT500クラスのNSX-GTは、バックストレートで240km/h程度の最高速度を記録しています。彼方此方が濡れたコンディションでありながら、S102はあっさりと280km/hをマークしました。
 たのしみな状況となってきました。

 シェイクダウンですから、サスペンション等本格的なセットアップを行う段階ではありません。今回のテストの目的は、様々なシステムをチェックすることです。取り敢えず、路面効果を削減するため、前後のロードクリアランスを上げ、空力性能を引き下げて走行しています。そのため、車高が高く、違和感を感じるかもしれません。

 午後になって、コースコンディションは完全にドライとなりました。しかし、まるでポールリカールに吹き荒れるミストラルのように、強い北風が吹き始めたため、ヨチヨチ歩きで走り始めたばかりのS102にとっては、過酷なコンディションと言えるかもしれません。

 今回のテストの最も大きなテーマは、パドルシフトシステムを中心としたギアボックスのテストでした。
 遅れて完成したギアボックスそのものは、予定通り作動しているようです。しかし、ザイテック製のパドルシフトシステムは、昨日ウエットコンディションでドライブした伊藤大輔を非常に悩ませました。

 去年S101.5を使って行われたテストのデータを参考にして、パドルシフトシステムのプログラムを見直すと共に、リンケージを変更しました。
 そのため、今日の走行では、昨日の絶望的な状況は大部改善されました。今日乗り組んだ立川祐路と片岡龍也によると、かなりのレベルで違和感なくシフトチェンジが可能と報告しています。
 しかし、まだ、走行距離が少なく、ギアボックスを開けて中身をチェックした訳でもないため、現時点で判断することは出来ません。

 このような状況ですが、午後ほんの少しだけ余裕が出てきたため、立川祐路が乗り組んで連続走行も行いました。
 最後に片岡龍也が乗り組み、燃料タンクの最後の1ccまで吸い上げて走行するテストを行って、シェイクダウンを終了しました。